コラム: プライバシーと個人情報
2009年5月12日
さて最近某アイドルグループのメンバーが逮捕された話題がお茶の間を賑わせました。
記憶が無くなるまで飲んで公園で裸になって踊ってしまい、公然わいせつ罪で捕まってしまったということのようです。
当初速報ニュースで報道されたりして大騒ぎでしたが、時間が経って当時の様子が見えてくると共にマスコミの調子も沈静化してきたようです。
お酒の好きな方ならご承知の通り、飲み過ぎて記憶を無くしてしまった翌朝ほど後悔する時はありません。自分が何をやったのか覚えていない恐怖感たるや…。彼の場合はその恐怖が現実になってしまったということで、さぞ目の前が真っ暗になった事でしょう。
確かにみっともない話ですし、トップアイドルという立場上様々な相手に迷惑をかけたのも事実でしょうが、正直なところ大層な罪名をつけられて犯罪者扱いされなければならないような事なのか?という気がします。
同じ事を一般人がしたら、せいぜい武勇伝の一つで終わるレベルの事かもしれません。
少なくとも、しどろもどろな記者会見をして全世界に恥をさらしたどこかの元大臣と比べたら、全く他愛ないものだと思います。
さて、“個人としてそっとしておいて欲しい権利”、簡単に言うとこれがプライバシーです。
このアイドルの場合も、オフの日に、誰とどこに行こうと、何を飲もうと、酔っぱらって多少の酔態をさらそうと、本来はプライバシーです。
釈放後の記者会見で、彼はどこで何を何杯飲んだだとか、何を食べただとか、はたまた過去に酔っぱらった時の話まで、プライバシーの範疇に入る事を随分話していました。
その上、警察には家宅捜索まで行われてしまい、彼のプライバシーはずたずたというところでしょう。有名税といえばそれまでですが、タレントとう商売も気の毒なものです。
(ちなみに前述の元大臣の場合、記者会見の席上は公務でしょうから、プライバシーもへちまもない、という事になります。)
プライバシーが権利を指す言葉である事に対し、個人情報とは情報そのものを指す言葉です。
このアイドルが逮捕された公園には監視カメラが何カ所も設置されているそうですが、もしかしたらそのうちのどれかに、裸で踊る彼の姿が録画されているかもしれません。
(あくまで想像ですが)
もし仮に公園の管理者が、監視カメラの映像を持ち出してこっそり第三者に売ろうと考えたらどんなことになるでしょうか?
写真週刊誌などは飛びついてくるだろうと容易に想像できます。これをネタにして所属事務所などから金を脅し取ろうと考える輩や、有料サイトで公開して金儲けをしようと考える輩が売ってくれと言うかも知れません。
いずれにしてもきっとかなりの高値で売れる事でしょう。
しかし個人情報保護法では、このような録画データも個人が特定できれば個人情報として保護の対象となります。
民間人であれ公務員であれ、原則として個人情報を本人の同意なく第三者に提供する事は個人情報保護法に対する違反行為ですから、管理者が真っ当な人であれば、そのようなことを行わないでしょう。
しかしもし、個人情報保護法が存在していなかったら、恥ずかしい映像は大変な“値”がつけられて取引され、どんどん広まっていってしまうかもしれません。
誰にとっても守られるべき、プライバシーという権利が形になったもの、これが個人情報です。個人情報は一種の財産であると言ってよいでしょう。
個人情報をしっかり保護できれば、大切なプライバシーが保護されるともいえます。
個人情報保護法はとかく煙たがられますが、こう考えるとその存在意義が少し見えてくるような気がしませんか?
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